年越しに読んだ本

見えない都市 (河出文庫) 見えない都市 / I・カルヴィーノ著 ; 米川良夫訳. -- 河出書房新社, 2003. -- (河出文庫). -- ISBN:4309462294 ; 本体\850
著者名の省略しない形(イタロ)や、文庫の番号(カ 2-1)は、カバーには書いてあるけど、目録の情報源となる場所には書いてありませんでした。カバーの扱いは、もう少しなんとかできないものかと思いますが。
マルコ=ポーロがフビライに語るという形式で、さまざまな都市についての短い語りが続く小説です。この設定が作品の肝だと思いました。世界史上最大の版図を誇った帝国の支配者、しかし大都から動かない彼には、広大な帝国の辺境について知る術は、前線からの報告による以外にない。彼にとっては、その土地が報告どおりであるかどうか、さらにはその都市が実在するかどうかすら、報告を彼が信ずるかどうかによってのみ定まる*1。マルコによって語られる不思議な都市の数々は実在するのか? そもそも彼の帝国は実在するのか。実在とはそもそもなんなのか。設定をこの時代・この人物にしたことで、そうした想像がはたらく作品になっているのだと思います。

*1:ATLASシリーズの「この報告を信じますか?」に通ずるものがあります。