平成20年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系)〜機関リポジトリの更なる普及と新たな価値創出に向けて〜 Part4 「リポジトリを知る」

先週の9日・10日に開かれた標記イベントに参加してきました。
これは9日の午後のPart4のレポートです。なぜPart4だけかというと、他のパートは例によってかたつむりさんがしっかりまとめてくださってる*1のですが、このパートだけは事情により抜けているので、その補完です。
個人的なメモから起こしているので、怪しい部分はどうぞご指摘ください。

リポジトリ登録は、次の引用を喚起するか:これまでの成果と今後の課題(筑波大院・佐藤翔さん)

ILLとタッグを組んでIRを加速させよう!―IRcuresILL1年目の取り組みから―(小樽商大図・鈴木雅子さん)

  • IR cures ILL プロジェクト*3
    • 潜在的文献需要への予測対応
    • リポジトリへの登録がILLの抑止につながるか
      • 1箇所でオンライン公開されているだけで、同じ文献を全国各地で何回もコピーして発送する手間が省けるはず--ILLデータをもとにリポジトリへの登録を誘導できるか
  • ILL担当者アンケートの結果
  • NACSIS-ILLデータ分析
    • 高頻度依頼文献の調査
      • 標題の単語の頻度からも、看護系が多い
      • 国内文献が特に多い
      • 所蔵館の少ない雑誌以外にも、高頻度依頼文献がある

リポジトリ構築における悩みと解決への道―アンケート調査結果を中心に―(広島大図・上田大輔さん)

  • IRコミュニティサイト構築プロジェクト*4
    • 各種リポジトリシステム体験用デモサイトの設置
    • SNS等担当者ネットワーク
      • DRF ML等では聞きにくい内容等
  • 上記設立に先立ち、実態調査(アンケート)
    • システム
      • 多様なシステムが存在するにもかかわらずDSpaceが圧倒的
      • ソフトウェアの事前の比較検討のしにくさや日本語の情報量の偏りが原因
    • 担当者育成
      • スキルの維持、初心者の底上げ、アフターケアなどの必要性
    • 気軽に情報交換・情報共有が出来る場に需要がある

ROAT:機関リポジトリ評価のための基盤構築に向けて(千葉大図・森一郎さん)

  • ROAT(機関リポジトリ評価のための基盤構築)プロジェクト*5
  • 機関リポジトリのアウトプット(利用)による評価
    • アクセスログの分析
    • インプット(コンテンツ数)だけの評価を補完
    • 「利用されている」というのはプロモーション材料としても最適
  • ROATの必要性
    • アクセスログには検索エンジン等のBOTやダブルクリックなどのノイズが多い
    • 統一的な基準に従って処理するための標準が必要となる
    • 各機関がインストールすることなく、簡便に利用できる環境
      • ログをアップロードすると自動的に処理してくれる
  • 今後の改善点
    • ログ分析の空白期間への対応
    • アップロード済みログファイル一覧の表示
    • 書誌表示機能の強化(現在はJAIROからfullTextURLをキーとして取得)

機関リポジトリのコスト分析(東北学院大・佐藤義則先生)

  • 問題の所在
    • 機関リポジトリの構築・コンテンツ投入に要する費用の現状と適正水準
    • コンテンツの種類ごとに要する費用・人員・時間
    • 各機関の参考となるベンチマークの作成
  • 先行研究
    • 以前はSwanの調査くらいしかなかったが、昨年あたりから国際的に注目関心
    • コンテンツの投入から保存にいたるライフサイクル全体を分解して原価計算を行うモデルがいくつか登場
      • LIFEモデル(British Library, University College of London)
      • BCLモデル(Beagrie, Chruszcz, Lavoie)
    • ただしコストは低ければ低いほどよいものではなく、費用対便益や品質を考慮する必要がある
  • 日本における現状分析
    • 平成17〜20年度のCSI事業成果報告書の値と聞き取り調査により集計
    • 初期導入費 概ね100〜300万円
    • 年間保守費 平均51.2万円(中央値16万円)
    • 開発費 自主開発からフリーソフトの利用まで幅広い
    • 運営費 19年度→20年度で、コンテンツ作成経費・その他人件費(派遣職員等)減少、投入人員増加
      • ただし人員のカウントに関しては基準があいまいなので、共通認識を持てるような説明の明確化が必要か

ディスカッション

  • 山地先生(NII)
    • 日本におけるIRとオープンアクセスについて→フロアの三根先生
  • 三根先生(名古屋大)
    • 紀要の電子(出版)化によって、これまで遅れていた人文社会系のEJ化が進んだ
  • 山地先生
    • 今期CSI事業の「重点コンテンツ」政策によって、従来のオープンアクセスの路線が薄れた部分がないか→フロアの杉田さん
  • 杉田茂さん(北海道大)
    • デポジット義務化に行かないのか、と聞かれたことがあるが、そのあたりは海外では(図書館員発ではなく)研究者発の運動によるものだった。日本でも研究者側からそういった機運が出てこないと大きくは動かない。
  • 永井さん(日本動物学会)
    • 佐藤翔さんの調査結果を見せたら、動物学会の理事が歓声を上げた
    • リポジトリとは何か、という点をもう一回考えないといけない時期か
    • 今まで存在自体が見えていなかった論文が、リポジトリによって見えるようになったということで、OAとはちょっと違うかもしれない
    • リポジトリを学会が出版のプラットフォームとして使用することはありうるだろうか
  • 安達先生(NII)
  • 佐藤義先生
    • ただ、リポジトリの暗黙の前提としては、障壁なきアクセスというのがある
  • 高久さん(NIMS)
    • 確認だが、リポジトリ公開と引用の関係については、まだ分かっていないということでよいか→佐藤翔さん
  • 佐藤翔さん
    • はい
  • 高久さん
  • 佐藤義先生
    • いずれその方向で検討する