赤川学『子どもが減って何が悪いか!』(ISBN:4480062114)

こないだの三連休に東京へ行った往路で読み終わっていたのですが、感想をまだ書いていないのでした。
この本の主張は以下のようなものだと思います。

  • 男女共同参画社会になっても、少子化は止まらない。
    • 止まる、という主張には、統計データの解釈に問題があるものが多い。(代表的な例がこの下の図。どこがおかしいのかは本書を読んでください)
    • 女性の子ども数と強い相関のあるパラメータは、居住地・学歴・年収など、政策的に変えることが難しいものばかりである。
  • 少子化対策として男女共同参画社会を訴えることは、無益どころか有害である。
    • なぜなら、少子化対策として有効でないことが明らかになった場合、男女共同参画も必要ないものとされるおそれがあるため。
  • たとえ少子化が止まらないとしても、男女共同参画社会は別の理由(選択の自由の保障)から必要である。
    • 「産む自由」のみを奨励し、「産まない自由」に対しては何もしないというのは、選択の自由の観点から見て不均衡である。
  • 少子化はそのメカニズムからして、止めることは不可能である。
    • 結婚に対する期待水準と現実とのギャップ(相対所得仮説)
  • 現在の制度(年金・労働力 etc.)を維持するために子どもを増やそうと(不可能な)努力をするより、子どもが減っても維持可能な制度を設計する方向に転換すべきである。

序盤のリサーチ・リテラシーに関する部分ももちろん面白かったですが、後半の「選択の自由」を説いた部分がさらに良かったです。特定のライフスタイル(仕事と育児の両立)をことさらに奨励・推進するのでなく、それを選択するもしないも自由という環境をつくるべきというのに賛同です。両立したいひとはすればよいし、専業主ふ*1がよければそうすればいい。子供を産みたいひとは産めばいいし、そうでないひとは産まなければいい。いずれかを選択しにくい状況があるとしたら、改善すべきなのはもちろんとして。
選書に関する議論にも通じるものがあるかなぁ、とか連想してみたけど、それはこじつけっぽいかもです。つまり、これが良書であるというのを図書館が規定するのではなく、あくまで図書館は多様な資料の収集に徹して、判断は利用者に委ねるという、「図書館の自由」的考え方。まあそれも「有害」だなんだ言ってちょいちょい破られてるところをみると、自由を貫くのも難しいのかなぁとか考えちゃいますが。

*1:婦でも夫でもいいので平がなにしました